一流の鍛冶職人が手打ちで造り上げた伝統的な料理包丁

刃物鋼材

«炭素»鋼

炭素が多く含まれる酸化鋼が炭素鋼である。このような鋼は丁寧な取り扱いと注意を要する。炭素が含まれている刃をやすりにかけると、反響する鋭い音で識別することができる。ほかの鋼材にはない«かみそり»のような切れ味があり、研摩も簡単にできる。ロックウェル硬さは62°-63°まで上げることができる。

ステンレス鋼

13%以上のクロムから構成される鋼はステンレス鋼と呼ばれる。使いやすく、手入れが簡単で切れ味がよい。また研摩もしやすく耐久性にも優れている。ステンレスの合金によっては、実用硬度が60°~61°HRCまで上げることができる。

実際には、錆びないステンレス鋼というものは存在しない。極端な条件下で使用すれば、時間とともに錆びる。

«粉末»または焼結鋼およびHSS(ハイス)

HSS(ハイス:高速度鋼 )はもともと、金属製の材料を高速で切削するために開発された合金である。高温で焼入れができる。
ハイスには、モリブデンまたはタングステンが多量に添加されており、硬度が非常に高いという特性がある。標準を超える構成成分と一緒に超微粉体の粉末に圧力をかけて固め焼結させた鋼材である。炭素3%、クロム20%が含まれ、ステンレス鋼またはセミステンレス鋼と呼ばれる。これは、多量の炭素が含まれているため、酸化の影響を受けやすい。硬度が64°-68°HRCまで可能なため、切れ味に優れ、長切れする。
しかし、研摩が難しく、良質の砥石が必要になる。このような合金は購入価格が高く、焼き入れが難しい。そのため、最終製品の価格が非常に高価になる。

主要合金

炭素

白紙または白鋼1 (白鋼)
日立金属製の鋼材。炭素約1.3%, マンガン0.25%,実用硬度61~64 HRCで構成される。 粒子の細かい純粋な炭素鋼でつくられた非常に硬い鋼材。伝統的な鍛冶製法により、本焼き刃物の製造に使用される。

白紙2号
白紙1号と同じ組成であるが、硬度は低い。

青鋼または青紙1号 ( 青鋼)
日立金属製の鋼材。炭素約1.3%, 基本の白紙にタングステン1.5%, クロム0.4%を添加している。実用硬度61 ~64 HRC。 炭化物の添加により、白鋼よりも耐久性が増した。また、最高峰の本焼き刃物として使用される。

青紙2号
青紙1号と同じ組成であるが、硬度は1号よりも硬度は低い。

青紙スーパー
日立金属製の鋼材。炭素約1.4%,基本の青紙にモリブデン0.4%, バナジウム0.4%を添加している。実用硬度61 ~65 HRC。 焼入れを上手く処理できると、耐久性があり、硬度の高い最高級鋼材になる。 刃を非常に薄く研ぐことができ、耐久性もあり、切れ味に優れている。

V2C
武生特殊鋼製の鋼材。炭素約1%,クロム0.5%, 実用硬度60~62 HRC。 52100またはSK3に似た単純合金。

玉鋼
比較的やわらかい、等級の高い砂鉄を低い炉で焼入れする。特に日本刀の材料として用いられる。

ステンレス鋼

銀三鋼またはシルバー3
日立金属が開発した銀三鋼には、炭素約1.05%, クロム13%, マンガン0.8% , 硬度 59-62HRCで構成されている。 ステンレス鋼は伝統的にもっとも頻繁に使用されている鋼材で、非常に純粋で 粒子が細かく、良質の成分でつくられているため、性能に優れている。

VG10
武生特殊鋼材製の鋼材。炭素約1%, クロム15%, モリブデン1%, バナジウム0.2%, コバルト1.4% , マンガン0.5%, 硬度58-62HRCで構成。 新しく開発されたステンレス鋼。その品質から現在、多くの鋼材に使用されている。コバルトが含まれているため、超高温での焼入れが可能。 硬度が高く、摩耗、変形および酸化に対する耐久性に優れ、切れ味がよく、長切れする。 墨流し包丁によく使用される。

VG1 (RC60)
武生特殊鋼材製の鋼材。炭素約0.95%, クロム14% およびモリブデン 0.30% で構成。 高濃度の炭素にモリブデンを添加し、高い耐久性がある合金。

AUS10
愛知製鋼製の鋼材。炭素約 1.05%, クロム14%, モリブデン0.2%, バナジウム0.2%,マンガン0.5%, ニッケル0.5%, ケイ素1% ,硬度58-61HRCで構成される。 普通のステンレス鋼 にモリブデン/バナジウムを添加し、基本的なステンレス鋼よりも硬度を強化している。

UX10
スウェーデン鋼。炭素約1%, クロム14%, モリブデン1% , バナジウム0.2%, 硬度59-61HRCで構成される。 ミソノが高級製品に使用している鋼材。VG10に似ているが、コバルトが添加されていないVG10は硬度が低い。

MBS26
正広製の鋼材。炭素約0.9%, クロム14%, モリブデン0.1%, マンガン0.3%, 硬度58-59HRCで構成される。 この鋼材は単純組成鋼で、しなやかで耐久性があり、炭素量を多く含むため、切れ味に優れている。

19C27
サンドビック社のスウェーデン鋼。銀三鋼と同じ特性がある。

特殊粉末鋼ARS

ZDP189 (MC66)
日立金属製の鋼材, 炭素約3%, クロム20%, モリブデン1.4%, バナジウム0.1%, タングステン0.60%, マンガン0.5%, 実用硬度 64-68 HRCで構成される。 炭素を多く含む合金で非常に硬く、耐久性があり、切れ味が長持ちする。 粉末ハイス鋼でつくられた刃は、性能に優れているが、研ぐのが難しい。

カウリ X
大同特殊鋼製の鋼材。炭素3%, クロム20%, モリブデン1%, バナジウム0.3%, 実用硬度64-67 HRCで構成される。 ZDP189に似ているが、タングステンは含まれない。

R2
神戸製鋼の鋼材。炭素約1.45% , クロム16%, モリブデン3.2%, バナジウム2%および マンガン0.5%, 実用硬度62-65HRCで構成される。 酸化および摩耗に対する耐久性が高く、変形にも頑丈である。最適な性能を保証する高級鋼材で研摩も比較的簡単にできる。

SKD11/ SLD
日立金属製の鋼材。炭素約1.6%, クロム13%, モリブデン1%, バナジウム0.4%, マンガ0.3%, 実用硬度62-64HRCで構成される。 耐摩耗性に優れた工具鋼材。SLDは基本的に同じで、粒子レベルで改善された鋼材。

SRS15
炭素約1.5%, クロム13%,モリブデン2.75%, バナジウム1.5%, タングステン1.25%, 実用硬度62-64 HRCで構成される。 耐摩耗性に優れた合金で、正しく扱えば台所包丁として優れた性能を発揮する。

SG2またはSPG2 (MC63)
武生特殊鋼製鋼材。炭素約1.35%, クロム14.5%, モリブデン2.8%, バナジウム2%, マンガン0.35%, ニッケル0.10%,実用硬度61-63HRCで構成される。 粉末鋼R2とほぼ同じ鋼材。

ATS34
日立金属製の鋼材。炭素約1.05%, クロム14% , モリブデン4%, マンガン0.40% , 実用硬度61-64HRCで構成される。 非常に硬く、耐久性がある鋼材でナイフの固定刃によく使用される。

HAP40
日立金属製の鋼材。炭素約1.35%, クロム4.50%, モリブデン5%, バナジウム3 %, タングステン6%, コバルト8%, 実用硬度62-65 HRCで構成される。 非常に硬い組成の鋼材で、刃の使用期間は驚くほど長い。